不登校児童の増加、昨今!

2022年02月20日
小・中学校における不登校の児童生徒数が2020年度、ついに20万人近くに達し、過去最多を記録した。しかも8年連続で増加している。その事実だけを取り上げれば深刻な事態のようにも見えるが、背景には、無理やり登校させようとすると自殺などにつながりかねないという理由で、登校を強制しないほうがいいという考え方が広がっていることもある。オンライン学習など不登校児童生徒を支援する手だても増えており、独自の取り組みをする自治体もある。なぜ学校に行きたくないのか、行けないのか、個々の児童生徒の思いに寄り添った取り組みが必要である。
文部科学省が2021年10月に発表した「令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(以下、「問題行動調査」)によると、小・中学校における不登校の児童生徒数は19万6,127人と過去最多。 小1から中3へと学年があがるほど、不登校の児童生徒の数が増加していることがわかりました。不登校の人数は8年連続で増加2020年度、小中学校における長期欠席者の数は28万7747人、そのうち不登校の児童生徒数は19万6127人に及ぶことが文部科学省「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」で明らかになった。
この調査によると、不登校の児童生徒数が全児童生徒数に占める割合は、小学校で1.0%、中学校で4.1%で、全体との比較で見ればごくわずかという印象もある。だが、最近5年間でその割合は増える傾向にある。不登校児童生徒の人数そのものも8年連続で増えている。しかも、その約55%は年間90日以上欠席しているという。そうした子どもたちが学習の機会からシャットアウトされたままでいいはずはない。
不登校の児童生徒数の時系列的な推移を見ると、12年度までは小・中学校ともに横ばい的な動きだったが、13年度以降は増加傾向にある。1000人当たりの不登校児童生徒数の推移を見ても同様のことがいえる。
不登校の状況を詳しく見ると、事態の深刻さが浮き彫りになってくる。
欠席日数が30日から89日の児童生徒数は小・中学校の合計で45.1%だが、90日以上欠席した児童生徒数は54.9%にも及ぶ。小・中学校の年間授業日数はおおむね200日前後のところが多い。したがって不登校の児童生徒の半数以上は、授業日数の半分近くを欠席していることになる。1日も登校していない児童生徒数も、小学校で約2000人、中学校では約6000人いる。
また、学年別の不登校児童生徒数を見ると、小・中学校ともに高学年になるほど増えている。とくに小学校から中学校に進学すると、一気に増加していることがわかる。20年度の場合、小学6年生の不登校児童生徒数は1万9881人だが、中学1年生だと3万5998人で、実に1万6000人強も多い。中学校に進学した途端、不登校の子どもが増えるのはなぜか。
人間関係がストレスに?この調査では、不登校の要因について、「いじめ」や「いじめを除く友人関係をめぐる問題」「学業の不振」などを「学校に係る状況」、「家庭の生活環境の急激な変化」「親子の関わり方」などを「家庭に係る状況」、「無気力、不安」と「生活リズムの乱れ、あそび、非行」を「本人に係る状況」というカテゴリーに分けている。
カテゴリー別に見てみると小学校、中学校ともに「本人に係る状況」を要因とした割合が最も高く、小学校では計60.3%、中学校で計58.1%となっている。その中でも「無気力・不安」は小学校で46.3%、中学校で47.1%に上っている。
「学校に係る状況」を要因に挙げた割合は、小学校で計14.8%、中学校で計26.7%と意外に低い。また「家庭に係る状況」を要因としているのは小学校で計20.0%、中学校で計10.5%となっている。
これだけ見るとあたかも不登校の要因は第一義的に本人に問題があるように思えてしまうかもしれないが、無気力や不安になったもともとの要因が学校や家庭にあった可能性もあるはずだから、本人に問題があると決めつけるのは早計だろう。
なお「学校に係る状況」のカテゴリーに入った要因でいちばん多かったのは、小・中学校いずれも「いじめを除く友人関係をめぐる問題」であった。
大人と同様、子どもたちも社会での人間関係にストレスを感じているようだ。ちなみに「いじめ」が要因で不登校となった児童生徒数の割合は小学校が0.3%、中学校が0.2%。いじめにより「相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある」と認められたケースは、小学校で143件、中学校で155件、高等学校で47件、さらに特別支援学校で2件となっている。
コロナ感染回避目的の欠席も不登校となった児童生徒数の65.7%の約12万9000人は、学校内外の機関などで相談・指導などを受けている。
この人数は前年度と同じ水準だが、不登校児童生徒に占める割合は前年度の70.4%からやや減少している。3割以上の児童生徒が、学校内外の機関で相談・指導を受けていないということだ。約12万9000人のうち、約7万3500人は学校外の機関で相談・指導を受けている。学校外の機関とは、教育支援センターや民間団体、民間施設などのことである。
なお、この調査では、新型コロナウイルスへの感染回避のために長期欠席した児童生徒数も調べており、小学校で1万4238人、中学校で6667人の合計2万905人であった。ちなみに自宅におけるICT等を活用した学習活動を指導要録上出席扱いとされた児童生徒は、小学校で820人、中学校で1806人である。
一方、20年度の高等学校の長期欠席者数は8万527人で、そのうち4万3051人が不登校となっている。また新型コロナウイルスへの感染回避による長期欠席者数は9382人だ。
高等学校の不登校者数の長期的な推移を見ると、年度によって増減はあるが、漸減傾向といえる。04年度には6万7500人だったが、16年後の20年度は4万3051人で、2万人以上も減っている。ただ、不登校生徒数の19.6%は90日以上欠席しており、出席日数0日の生徒も1.3%いるので、小・中学校と同様、やはり憂慮すべき状況といえそうだ。
ただ、こうした不登校の児童生徒が増え続ける背景には、学校・教員や保護者の対応の変化がある。不登校の子どもを追い詰めると、最悪の場合自殺につながりかねない危険があるため、無理やり登校させるようなことはしないほうがいいという考え方が広がっているのである。文科省が19年に通知した「不登校児童生徒への支援の在り方について」でも、登校という結果だけを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に考えることが必要だとしている。
文科省は取り組みを強化この調査を踏まえて文科省も、課題の早期発見や支援のための教育相談支援体制を充実させるためにスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を充実させるなど取り組みを強化している。
不登校児童生徒については、自治体や民間団体などが行う学校以外の場における支援体制の整備を推進したり、教育支援センターを中核とした民間団体などとの連携促進、アウトリーチ型支援の充実、校内支援体制の充実促進、不登校特例校の設置促進などを進めたりしている。不登校の児童生徒を対象とする特別の教育課程を編成して教育を行うことのできる特例校はすでに全国に17校が設置されている(21年4月1日現在)。
不登校の児童生徒を対象とする特例校は全国に17校ある【北海道】札幌市 星槎もみじ中学校【東京都】葛飾区 東京シューレ葛飾中学校八王子市 八王子市立高尾山学園小学部・中学部国立市 NHK学園高等学校調布市 調布市立第七中学校はしうち教室江戸川区 東京シューレ江戸川小学校福生市 福生市立福生第一中学校大田区 大田区立御園中学校【神奈川県】横浜市 星槎中学校、星槎高等学校【愛知県】名古屋市 星槎名古屋中学校【岐阜県】揖斐郡 西濃学園中学校岐阜市 岐阜市立草潤中学校【京都府】京都市 京都市立洛風中学校京都市 京都市立洛友中学校【奈良県】大和郡山市 学科指導教室「ASU」【鹿児島県】日置市 鹿児島城西高等学校普通科(ドリームコース)(21年4月1日現在)こうした中、不登校の児童生徒を支援するため、独自の取り組みをする自治体もある。
熊本市は22年度から不登校の児童生徒を対象にした「教育ICTを活用したオンライン学習支援」を開始する計画を進めており、その本格実施に向けて21年9月から学習体験をスタートさせている。同市教育委員会が主導して進められているこの学習体験では、40人を想定して希望者を募ったところ小学生26人、中学生42人の参加申し込みがあり、9月1日からZoomなどを使ったオンラインの学習支援が行われている。
熊本市は教育のICT化を17年度から本格的にスタートさせてきた。そのため20年のコロナ禍での一斉休校のときにも4月半ばには市内すべての小・中学校でオンライン授業を始めることができたという。
こうしたコロナ禍で、オンライン授業に取り組んだ自治体や学校では、不登校だった児童生徒がオンライン授業には参加できたという例が多くあった。熊本市では、学校が再開されてからも教員たちがオンラインで学習支援を行ったところ、3学期からは登校できるようになった生徒もいた。
今日は学校に行きたくない――。どんな子どもにも、そう思う瞬間はきっとある。しかし、それが長期欠席・不登校になると、学校に行きたくない・行けないという、本人にとっては切実な理由が必ずあるはず。子どもにとって真に大切なのは、登校することではなく、学びを止めないこと。そうであるなら不登校の児童生徒に対しては、ICTなども活用しながら、まずは学びの機会をきちんと用意することが優先されるべきであろう。
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